経営のヒント vol.18「ワークライフバランスの実現に向けて」2021年7月5日
最新号 ワークライフバランスの実現に向けて
ワークライフバランス(WLB)。
企業での働き方改革の中でよく耳にする言葉ですが、正しい意味をご存じですか。
WLBの実現に取り組むことは企業側にもメリットがあります。
WLBの必要性、そのために企業側に何が求められているのかをご紹介します。
改めてWLBについて、考えてみてはいかがですか。
ワークライフバランス(WLB)とは?
ワークライフバランス(WLB)。
この言葉、数年前からよく耳にするようになりましたが、実は新しい考え方ではありません。
日本では、今から14年前、2007年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。
(参考:「仕事と生活の調和」推進サイト ※ この先は、外部サイトへ移動します)
これによると、
- 就労による経済的自立ができること
- 健康で豊かな生活のための時間が確保できること
- 多様な働き方・生き方が選択できること
この3つを兼ね備えた社会が、WLBの実現された社会とされています。
誤解されがちな考え方・意味
WLBを以下のようなものだと思っている方はいないでしょうか。
- 仕事をメインとせず、プライベートをもっと充実させる
- 仕事とプライベートは別のもの。きっちり線引きして分ける
「プライベートだけを充実させること」と誤解されがちですが、仕事とプライベートのどちらかを犠牲にするものではなく、労働時間・形態を見直して、仕事と生活、両方の充実を目指すものです。
バランスをとることで得られる相乗効果や好循環のことを意味します。
WLBの必要性
日本ではWLBというと、女性の出産・育児・働き方を支援するものと考えられることがあります。
しかし、実は男性にも大きく関わってきます。
それは高齢化による介護問題です。
国立社会保障・人口問題研究所による人口ピラミッドの推移を確認すると、団塊の世代が70代に入り、介護対策がますます必要となっています。
(参考:国立社会保障・人口問題研究所 ※ この先は、外部サイトへ移動します)
親の介護が必要となったときに、男性・女性問わず
- 安心して休みが取れる
- 休職後、復職しても昇進の機会が与えられる
このような対策がないと、優秀な社員が定着しない世の中になることが予想されます。
つまり、WLBとは、
- 少子化に対する出産・育児支援
- 高齢化に対する介護支援
日本が直面する、この大きな2つの課題と向き合うことになります。
WLBのメリット
WLBの実現は、従業員だけではなく、企業側にもメリットをもたらします。
従業員へのメリット
- 育児・介護等と仕事の両立
- 心身の健康維持
- 仕事へのモチベーションアップ
- スキルアップを試みる時間の確保ができ、自己実現がしやすくなる
企業側のメリット
- 女性社員、優秀な人材の確保長時間労働の改善、労働生産性の向上(人件費の抑制)
- 従業員の心身の健康維持
- 従業員の資格取得による知識や仕事以外での経験を、新たに仕事に活かすことができる
- 企業イメージの向上
実践のための取組み
WLBを実現するためには、企業として何をすればよいのでしょうか。
基本的な取組みについてご紹介します。
育児休暇・介護休暇の充実
育児だけではなく、介護をきっかけに、これまで通り働けなくなる、これは誰にでも可能性があることです。
高齢化が進んだ日本では、家族の介護や看護を理由とした離職・転職数が男女共に年々増加傾向にあります。
短時間勤務制度、フレックスタイム制度の導入
育児や介護に携わる場合、送り迎えや突発的な怪我・病気の世話などのために、勤務時間を短縮して調整することが必要になります。
育児休暇や介護休暇などの休暇制度と併せて、個人の希望に応じて勤務時間や日数をフレキシブルに選択できる制度もニーズが高まっています。
テレワーク(在宅勤務)の導入
新型コロナウイルス感染症拡大防止策として政府からの要請もあり、思いがけず急速に広まりました。
WLBの面においても、コロナ対策としての一時的な対応ではなく、これからも継続してほしい就業形態の1つです。
福利厚生の充実
従業員が働きやすく、スキルアップを図れる環境づくりは、人材の定着や優秀な人材の確保につながります。
最近では、性別や年齢に関係なく、仕事と生活のバランスをとれることを重視する考えが中心になりつつあるようです。
WLBの実現に取り組むことは、「働き方改革として企業が行うこと」だけではなく、実際に働いている私たち自身が自分の働き方について見直すきっかけにもなります。
これから先、避けられない少子高齢化問題に対し、生産性・企業イメージを高めるためにも有効な戦略の1つとして、この機会にWLBの実現に取り組んでみてはいかがでしょうか。
(提供:公益財団法人神奈川産業振興センター)
総務課 木村 恵