コラム「経営のヒント」
当協会メールマガジンで配信している経営に役立つコラムのバックナンバーをご覧いただけます。
中小企業支援の専門機関によるコラム「経営のヒント」をご覧いただけます。
事業者間で定めた代金から減額されている! ~下請かけこみ寺への相談事例のご紹介(4)~
公益財団法人神奈川産業振興センターでは、中小企業・個人事業主・フリーランスの皆さまが抱える取引上の悩み相談を受け付け、問題解決に向けて専門の相談員がアドバイスを行う「下請かけこみ寺」を設置しています。
今回は、下請かけこみ寺に寄せられた、代金の減額についての相談内容と対応方法をご紹介します。
トラブル事例1:契約にない管理手数料が差し引かれている!
個人事業主のA氏は、元請B社の一次外注先であるC社(資本金300万円)から宅配配送業を請け負っていました。
C社が準備した契約書に、その場で署名するように言われ、契約書を読まずに署名して渡し、A氏には契約書の控えはありません。
個数成果報酬であり、1か月分の報酬の明細がC社から渡され、翌月末に支払われます。
何個配送したか個数を毎日記録していないので、報酬額が正しいかどうかはわからないのですが、毎月、報酬の10%を管理手数料として差し引かれています。
契約書の控えを取り寄せましたが、契約書の中には、報酬から差し引く費目の記載はありません。
報酬から、車リース代、ガソリン代などの諸経費を支払うこととなり、契約時に想定していた手取りがかなり少ないので、A氏は「下請かけこみ寺」に相談することにしました。
対応方法
契約書は署名すれば、C社とA氏の両者が契約内容に合意しているとみなされます。
契約書の内容によっては、たとえば「A氏が契約解除した場合、違約金が50万円発生する」など、A氏にとって不利益な記載があっても従わなければなりませんので、不利益にならないよう契約書はよく読んでからC社に提出しましょう。
正しい報酬金額がわかるように、配送個数を毎日記録し、証拠として残しておくことが大切です。
この事例については、契約書に差し引く費目の記載がないため、正確な減額金額を算出して、減額分が未払いであることを主張し、請求する方法があります。
トラブル事例2:消費税分が減額された!
建設会社D社(資本金2000万円)から、設計個人事業のE氏は、建築設計図作成の請負契約を締結しました。
建築設計図の納品が完了し、E氏は、D社に対して契約書に記載されたとおりの請求額で請求書を作成しました。
D社から、請求書にインボイス番号がないことを指摘され、E氏はインボイス発行事業者の登録を受けていないことを説明しました。
その結果、「インボイス発行事業者の登録を受けていないのであれば、消費税分は支払えない」とD社から言われ、契約書記載の金額から減額されました。
困ったE氏は、「下請かけこみ寺」に相談することにしました。
対応方法
資本金および取引内容から下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)が適用される取引になります。
契約後に契約書に記載された額から一方的に減額することは、下請代金の減額の禁止(下請法第4条第1項第3号)にあたる可能性があります。
対応として、D社に対して、下請法に抵触している可能性があることを示して差し引かないよう交渉する方法と、減額分を未払いと主張して請求する方法があります。
なお、契約前に消費税額を考慮した価格交渉をすることは問題になりません。
トラブル事例3:口頭契約の代金を一方的に減額された!
個人事業主F氏は、建設会社G社(資本金3000万円)から、マンションのリフォーム工事を請け負いました。
G社は知人の紹介で初めて取引をした建設業者であり、口頭契約で、契約書・発注書はありません。
G社は現場に来ておらず、LINE等でやりとりをしていました。
工事完了後、G社に口頭で約束した金額を記載した請求書を送付したところ、F氏が関わっていない工事箇所に言いがかりをつけて、一方的に減額された工事代金が入金されました。
困ったF氏は、「下請かけこみ寺」に相談することにしました。
対応方法
口頭でも契約は成立しますが、契約金額がいくらなのかなど、契約の内容が争われた場合には、それを立証する手段が十分でないため、契約書を作成されることをおすすめします。
建設業法において、請負契約の当事者のどちらが契約書を作成するかは定められていません。
工事をする際には、施工前後の写真を撮り、発注どおりに工事をした証拠を残しておくと、相手の言いがかりに対抗できます。
対応として、減額分が未払いであることを主張し、請求する方法があります。
ご相談ください
下請かけこみ寺は、このようなトラブルなどについての相談を無料で受け付けています。
もし何か気になることがありましたら、大きな悩みになる前に、まずはご相談ください。
お問い合わせ先
TEL:0120-418-618 (下請かけこみ寺専用ダイヤル)
ホームページはこちら
※この先は、外部サイトへ移動します
提供:公益財団法人神奈川産業振興センター
下請かけこみ寺
福田 有子
バックナンバー
- 2024年7月1日
経営のヒント vol.30「カーボンニュートラルの進め方」 - 2024年4月8日
経営のヒント vol.29「デジタル化の準備、本当にできていますか?」 - 2024年1月5日
経営のヒント vol.28「『フロントエンド・バックエンド』商品設計はやはり大事」 - 2023年10月2日
経営のヒント vol.27「『○週間無料 求人広告』自動更新されてしまった!」 - 2023年7月3日
経営のヒント vol.26「カーボンニュートラルはDXから始める!」 - 2023年4月10日
経営のヒント vol.25「ネット取引にご注意を… ~下請かけこみ寺への相談事例のご紹介(3)~」 - 2023年1月5日
経営のヒント vol.24「モノが売れにくい時代に『エンタメ』を売る」 - 2022年10月3日
経営のヒント vol.23「『DX』 ~身近なデジタル化から始めませんか?~」 - 2022年7月4日
経営のヒント vol.22「トラブルを未然に防ぐために ~下請かけこみ寺への相談事例のご紹介(2)~」 - 2022年4月11日
経営のヒント vol.21「トラブルを未然に防ぐために ~下請かけこみ寺への相談事例のご紹介~」 - 2022年1月7日
経営のヒント vol.20「起業するまでに準備すべきこと」 - 2021年10月11日
経営のヒント vol.19「コロナ禍での経営改善事例 ~飲食店の新事業展開~」 - 2021年07月05日
経営のヒント vol.18「ワークライフバランスの実現に向けて」